脇役男子
プロローグ
桜舞う季節。
新しい制服をぎこちなく着ている彼女たち。
その初々しい表情がたまらないと思ってしまう僕は、もしかしたらあいつらが言ってたように変態なのかもしれない。
校門を見下ろしながらそんなことを考えていると、登校してくる新入生の中で、一際目立つ子を見つけた。
黒髪を春の風に靡かせながら、颯爽と歩いてくる女の子。
可愛い…というよりは、"綺麗"という言葉が似合うと思った。
なんでだろう…目が離せない。
甘い蜜に吸い寄せられる蜂のように、僕は自然と彼女に惹かれていくのが分かった。
「おっはよー!まこっちゃん!……て、あれ?どしたの?」
「…なんでもないよ」
不自然に早くなった鼓動を抑えながら、俺はそっと窓の外から視線を外した。
ーーそれが俺と彼女の、初めての出会いだった。