Black Beast.
「 玲央くん、家こっち? 」
「 じゃなかったらなに? 」
「 こっちじゃないの? 」
「 さぁ? 」
自然と玲央くんが私を
送っていく雰囲気になっていて、
私は玲央くんの家を知らなくて。
少女漫画ではよく、不器用な彼が
”俺もこっちだから”なんて言って
実は真逆なのに送ってくれたりするから、
少しだけ気になった。
・・・私の恋愛の知識って大抵
漫画からなんだな・・・。
「 大人しく送られとけば? 」
「 ・・・う、うん? 」
なんだその言い方は。と
内心玲央くんにツッコミながら
視線が自然と下へと落ちていった。
夕方の薄暗い中を歩く2人の影が
目に入って、ハッとした。
・・・・誰かと一緒に帰るなんて、初めてだ。
よく考えたら、本当に私は
つい最近まで1人だった。
気付いたら毎日玲央くんが傍に居て、
大勇くんたちが周りで騒いでいるのが
当たり前のようになっていた。
本当は、1人が当たり前だったのに。