Black Beast.



「 あ、・・・えーと、
 送ってくれてありがとう 」


「 ん、じゃーな 」



部屋の前まで来て、あっさりと
腰に回されていた手は離れて、
当たり前のように彼と私の距離も
離れていく。



部屋の鍵を開けてドアノブを回す。



”上がって行く?”と、
漫画なら言うんだろうけど
私が言えるわけもなくて。



離れたくないな、と思う私も居るけど
恥ずかしくて仕方ない私も居る。



ドアを開けると彼が持っていた
袋を手渡してきた。



「 あ、ごめんね?持たせちゃって 」


「 別に。ちゃんと鍵閉めとけよ? 」


「 うん、ありがとう 」



玄関先に荷物を置いて、
内側からドアノブを握る。



・・・・閉めたくない。



後姿を見送りたいけど
どうやら私がドアを閉めるまで
動くつもりはないらしい彼は
ジッと私を見ていた。



・・・・どうしよう?



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