Black Beast.
「 あのメンバーってことは
・・・・これの出番かな? 」
楽しそうに声を弾ませて
私の横を通り過ぎて行った大勇くんの
手には、すずくんと同じクラッカー。
マズい!と思ったときには
もう遅くて、大勇くんは玄関に
たどり着いていた。
このままじゃ・・・サプライズが・・・!
─────────────玲央くん・・・!
今呼んでしまうと、拓未くんまで
こっちを向いてしまうかもしれない。
大勇くんの手に持ったクラッカーで
気付かれてしまうかもしれない。
寒気しか感じなくて、心の中で
玲央くんを呼んだ。
──────────────ドカッ
「 ・・・ッてぇぇ!!!! 」
「 朝からうるせー。
柚菜、行くぞ 」
「 あ・・・うん 」
たまたま振り返っただけなんだろうけど、
声に出したわけでもないのに
玲央くんが答えてくれたみたいで
少し嬉しいような、蹴られた挙句
クラッカーを握りつぶされた大勇くんが
可哀想なような・・・なんとも言えない気持ちになった。