Black Beast.
「 細川、お前に用はねぇんだよ。
・・・言いたいことは分かるよなぁ? 」
「 いや、分かんねぇな 」
入り口で睨み合っている2人は
今にでも殴り合いの喧嘩を始めそうな
雰囲気を放っている。
震える足で大勇くんに近づき、
肩を揺すった。
「 大丈夫ですか? 」
無表情で、無口。
激しい人見知りのせいで
人に話しかけるどころか
話しかけられても首を振るばかりで
人形とさえ呼ばれていた私は
どこに行ったのか。
自分から人に声をかけたり、
人の心配をしたり、
正直信じられない。
「 ・・・・ 」
「 ひろ、・・・桜井くん? 」
目を開けたものの、ぼうっとしている
彼を呼ぶと、横目で私を見て
ゆっくり立ち上がった。
何も言わず、表情も変えず、
私の口から棒つきキャンディを
引き抜いて────────・・そのまま口へ。