Black Beast.
さっきまでの明るい彼が
相手なら、その腕を掴んで
止めるなり私もしていたけど
誰が見ても、今の彼はおかしい。
口に含んだ飴を味わうことなく
ガリッと大きな音をたてて噛み砕くと
残った棒を片手に入り口でもめている
2人の方へ向かっていった。
「 チャラ男くん、お目覚めかぁ? 」
からかいを含んだ言葉をかけ
大勇くんに殴りかかろうとした彼は
一瞬で保健室から出て行った。
・・・いや、出て行ったんじゃなくて
保健室の外へ”吹っ飛んで”行った。
廊下から聞こえるのは苦しそうな咳と
生徒の悲鳴だった。
「 災難続きだな、アンタ 」
「 ・・・・ 」
「 あー・・悪い。
怖い思いさせたな 」
座り込んだままの私の前まで
来ると着ていたブレザーを脱いで、
私の肩に掛けた。
脱ぐときに手があたったのか、
見上げた彼は帽子を被っていなくて
帽子のせいで見えなかった金髪と
困ったような表情に戸惑って
視線を足元へ落とした。