Black Beast.



意識はまだないようで、
ガーゼに滲んだ血がさっきの
光景を思い出させた。



「 ご家族の方はいらっしゃいますか? 」


「 はいはーい 」



目を閉じたままの拓未くんを
みんなで囲んで、顔を覗きこむけど
拓未くんは目を開けてくれなくて、
泣きそうになるのをグッと堪えた。



震えるすずくんの頭を
大勇くんが撫でていて、病院に着く前から
ずっと携帯を片手に誰かと話している
璃玖くんも、むこうで心配そうに顔を歪めていた。



「 一緒に行けばいいの? 」


「 あ、・・・はい 」


「 んじゃ、お前ら拓未よろしくな! 」



弟が怪我をしているのに、
紫緒さんはけろっとしていて、
看護婦さんも戸惑いながら
紫緒さんを連れて行った。



夜ということもあって、案内された病室は
個室で、拓未くんをベッドに移すと
看護婦さんはぺこりと頭を下げて
病室から出て行った。


「 骨は折れてなかったんだな・・・ 」


「 でも足、数針縫ってる 」


「 拓未・・・痛かっただろうな 」



希くんと大勇くんが拓未くんの
全身の傷を見て一言ずつ零した後、
すずくんの一言で病室は静まり返った。



病室内に響くのは、規則的な
機械音だけだった。



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