Black Beast.
「 ・・・・もう少し、警戒しろ 」
耳元で響いた溜息交じりのその声に
身体の震えはピタッと止まった。
「 悪い、怖かったか? 」
ふっ、と手が離されて
口元を覆っていた手も離れていった。
眉を下げて謝りながら優しく
髪を撫でる彼はそのままゆっくり
背中へ腰へ手を回して、私を抱きしめた。
「 れ、玲央くん・・・っ 」
正直、本当に安心しきった状態で
ドアを開けたから、気を張っているわけもなくて。
一瞬、”殺される”とさえ思ってしまった。
本当に怖くて、玲央くんでよかったと
心の奥底からホッとしていた私は
何度も玲央くんの名前を呼びながら
気付けばしがみついていた。
「 ・・・・ 」
「 玲央、くん・・・? 」
「 ・・・いや、もう行くぞ。
大勇と希待たせてる。
鞄持って来い 」
顔を上げた私の目には、
辛そうに顔を歪めた玲央くんが映って、
”どうしたの”と聞く間もなく、
身体を離されて、私は部屋の奥へ戻った。