Black Beast.
♯02.ファーストキス
──────────ガラッ
「 き、北城さん 」
朝、ふと見た鏡に映った自分の顔に
悲鳴をあげそうになった。
酷いクマを隠すために朝から
コンビニでコンシーラーを買って
遅刻ギリギリで学校に入った。
「 ・・・・え? 」
目の下のクマと、ハンガーに掛かっていた
大きなブレザーと、ハンカチを除けば
いつもと何も変わらない。
そして今日、ブレザーとハンカチを
2人に返せば昨日のことなんて
ただの過去として薄れていくものだと思っていた。
「 昨日は・・・本当にごめん 」
「 あたしも、ごめんなさい 」
いつもより少し重い荷物を持っているから
足が重いんだと引き返しそうになる
自分に言い聞かせていたものの、
教室に入ってまず目に入ったのは
マキと呼ばれていた女の子と
一緒に居た女の子の腫れた目だった。
泣き腫らしたような赤い目で
謝られると、なんだか私が
申し訳ない気持ちになって来て
頭を下げそうな2人を止めた。
「 私は大丈夫なので・・・ 」
他に言葉が見つからなくて、
それだけ言って席についた。