Black Beast.
「 ・・・湧いてきそうだな 」
「 れ、玲央・・・ 」
「 あ? 」
電柱の影で誰かと電話をしている
璃玖くんは裏門の方を見ながら
真剣な顔をしていて、
その後ろですずくんは顔を
引きつらせながら玲央くんを呼んだ。
約20cm、自分より大きい人と話すときは
誰だって上目使いになる。
すずくんは少しビクッとしたけど
”あ、あの”と続けた。
「 柚菜・・・苦しそう、だよ 」
そう言って私を指差したすずくんは
眉を下げていて、子犬みたいだった。
「 ・・・苦しいか? 」
「 少し、だけ・・・ 」
「 ふーん・・・ 」
私と玲央くんの身長差は
30cmほどあると思う。
その玲央くんにグイッと
腰を力強く抱き寄せられたら、
誰だって片足が浮くと思う。
すずくんの言う”苦しそう”は
私の足を差していた。
私の足元を見るなり、ふっ、と
小さく笑って、1度手を離すと
今度は肩を抱いた。