Black Beast.
小さな音をたてて落ちたボタンを
ぼんやりと眺めながら、
強張っていた体から力を抜いた。
「 そうそう!これ!
先輩たちが言ってたんだけど
途中で抵抗しなくなったって。
こんな感じだったの? 」
綺麗な二重、丸い目。
お人形みたいに可愛い愛未ちゃんは
その見た目からは想像がつかないほど
キツい性格をしている。
口元を歪ませながらあの時のことを
聞き出そうとする愛未ちゃんは
悪魔にしか見えない。
「 ・・・・っ 」
「 ねぇ、柚。
最初からあたし達って
友達でも何でもなかったんだよ 」
「 愛未、ひどい~ 」
それをそうだと思いたくなかったから
それでも毎日が楽しいと感じられたから
少なくとも、私は友達だと思ってた。
一方通行でも、私は・・・。
「 前はこんな簡単に泣かなかったのに。
泣き虫になったんだね? 」
バッ、と勢いよく襟から手を離されて
壁に背中を打った。
廊下側と違って、割れていない窓が
衝撃で揺れて、私は痛む背中を
押さえながら声を殺して泣いた。