Black Beast.
ガシャンッ、とフェンスに
背中をぶつけた私は
体を突き刺すような
鋭い痛みに奥歯を食い縛った。
「 間違っても俺のことを
良い奴だと思うなよ?
アンタは人質で、
アイツらとのやり取りは
俺にとってただの”余興”だから 」
”まァ、殴り合いでもしてくれれば
もっと楽しめたんだけど”と
口元を歪めた彼は私に背中を向けた。
その先に居たのは彼の仲間なのか、
金髪や茶髪の不良たちだった。
数十人の不良とは離れてフェンス越しに
下を見ていた3人に彼が何かを話した後、
楽しそうに笑いながら彼女たちが
私の方に1歩ずつ近づいてきた。
「 ゆーず 」
座り込む私を見下ろす目に
ビクッと肩を上げた私は
心の中でついさっき言われた言葉を
繰り返していた。
”強くならないと”
彼はそう言ってこの3人を連れて来た。
私が地元を離れて遠い高校を選んだのは、
私を知る人から逃げるためだった。
・・・・もしかして、彼は私に
過去から逃げるなって、
弱いままで居るなって
そう言ってるんじゃないか。