Black Beast.
♯12.狂犬と黒獣
「 宮沢[ミヤザワ]ケイスケ、か 」
「 俺の名前、知ってンの? 」
玲央くんは真っ直ぐとゆっくり
歩いてきて、行く手を阻むように
ケイスケが立ち、2人は睨み合っていた。
「 ・・・・拓未やったの、お前か? 」
「 あァ・・・アレね。
俺じゃなくてスナオ。
俺は見てただけ。
スナオも、もっと違う奴居るのに
なんでアイツだったの?
帽子かぶってさ~・・ 」
ずっと怒りを堪えてきた玲央くんは
挑発的な彼の言葉を遮るように
拳を振り上げ、容赦なく彼を殴り飛ばした。
傷の手当なんて、してる暇がなかったのか、
それとも傷の痛みなんて忘れているのか。
玲央くんの額は赤黒く乾いた血が
べっとりとついていた。
「 ~~~ッ・・急だなァ 」
私のすぐ前まで吹っ飛んで来た彼は
血の滲んだ口元を袖で拭いながら
玲央くんを睨み上げながら
後ろに居る私をチラリと見て目を細めた。
彼がオモチャのように振り回していた
鉄パイプは殴られたときに手から零れ、
今は玲央くんの足元に転がっていて、
拭った血に視線を落とした後、
私に見えるよう、ゆっくりとポケットに
手を入れた。
「 ・・・・・・待って!!!!! 」
そんな私の声に、楽しそうに
口元を歪めた彼は、さっき拾ったと
言っていたソレをポケットから出した。