Black Beast.
鉄パイプを握る彼の足元には
今度は写真が1枚落ちていて、
冷たい目でそれを見下ろし、
何も言わず拾い上げた彼は
腹部を押さえ、呻く彼の方へ
ゆっくりと歩いていった。
─────────・・一度も私を見ることなく。
「 ・・・・・・ゲホッ 」
今さっき、もう逃げないと
自分に言い聞かせ、誓ったはずなのに。
返り血で制服を汚す彼の
冷たい背中を遠く感じただけで、
意思が揺らいでしまっていた。
喧嘩好きの狂犬と言われていた
ケイスケは、殴りかかるたび
玲央くんに吹っ飛ばされ、
気付けばぐったりとフェンスに
寄りかかっていた。
「 ・・・・やめて・・・ッ 」
彼の放つ殺気が怖くて、
彼に突き放されることが怖くて、
それでも、これ以上彼が
遠のいて行ってしまう方が怖くて、
震える足を引きずり、玲央くんの
背中に抱きついた。