Black Beast.

























「 ・・・・・・柚菜 」





カランッ、と手から力を抜き
鉄パイプを落とした彼は
振り返らずに私を呼んだ。





「 ・・・・・・来るの、遅くなった 」





”悪い”と、小さく謝りながら
片手で腰に回した私の手を握り、
空いた手でどうしようもない感情を
押し殺すように顔を覆っていた。





心のどこかで、その言葉に
ホッと安心を覚え、どこかで
まだ怯えている私が居た。





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