Black Beast.
♯13.約束のキス
──────────────グイッ
「 えっ・・・・? 」
「 お前はこっち 」
病院に着くまで何も話さなかった彼が
拓未くんの病室の手前で私の手を引いて、
みんなが病室に入って行くのを見ながら
ズルズルと引きずられるようにして
どこかへ連れて行かれた。
玲央くんだってケガしてるのに。と
内心思いながらも、もっとたくさん
ありがとうとごめんねが言いたくて、
玲央くんが何か言うまで黙っていようと
しばらく着いていった。
「 ・・・・柚菜 」
「 ・・・・うん? 」
「 お前、本当にケガしてねぇのか? 」
夕方の病院は薄暗くて、だけど人は多かった。
そんな病院の中をしばらく歩いて着いたのは
人気のない休憩所だった。
エレベーターの前にいくつか並んだイスに
ドカッと腰を下ろした玲央くんが
玲央くんの足の間に立つ私の頬に手を添えて真剣な眼差しでそう聞いてきた。