Black Beast.
放課後、残って担任の先生と
進路相談をした後、
分からないところを質問していたら
帰るのがいつもより大分遅くなった。
小雨が降る中、夏服の白いシャツが
濡れて透けていたことに気付いて
あまり人通りの多いところは
通りたくないと思った私は
人通りの少ない、木ばかりの
薄暗い道に足を向けた。
足元が車のライトに照らされて、
嫌な予感がしたときには遅かった。
ブレーキ音と、ドアが開く音。
気付けば体は宙に浮いていて、
反射的に閉じた目をそっと開けたときには
既に車の中に居た。
”撮影始めま~す”と
ヘラッと笑いながらそう言った男は
私の両手を掴み固定すると、
傍に居たもう1人にシャツを破られ、
今度は違う1人に足を掴まれ
動けなくなった。
雨に濡れたせいで冷えていた私の体は
寒さと恐怖に震え、口を塞がれ
声も出せないまま、彼らの言う
”撮影”は終わった。
私の上に覆いかぶさる男が、
”本当に撮るだけだから
暴れないでくれる?”と
声にならない声で叫び、首を振る私に
途中でそう言っていたのは覚えている。