Black Beast.




噎せ返るような香水の甘い香りに
混じった苦い煙草の匂いに
吐き気を覚えた。




体中に触れる指が気持ち悪くて、
温度も何も感じなかった。





”撮るだけ”だ。
本当に何かの、ただの撮影だった。





最悪を想像した私の体は
表面だけを撫でられた。
”最悪”には至らなかった。





だけど私は、もう戻れないような
そんな気がしてしまって
今までの自分と何も変わらないはずなのに
どこか一部を失くしてしまったような
そんな気さえしていた。





破れた制服は誰にも見つからないよう
コソッと捨てて、元から2つあった
制服をクローゼットから出し、
何事もなかったかのように着て
次の日、学校に向かった。





大丈夫。と自分に言い聞かせながら
入った教室で、私に向けられたのは
視線と、悲鳴。





”気持ち悪い”と何度も何度も言われ、
パッと顔を上げた私の目には
黒板に貼り出された写真が映っていた。





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