Black Beast.
「 あ、あの・・・これ・・ 」
「 こんなの別によかったのに! 」
”どうしたの?”と顔を覗き込んで来た
彼にハッとして、ポケットから昨日
借りたハンカチを出すと彼は小さく
吹き出して受け取ってくれた。
「 本当に面白いねぇ柚菜ちゃんって 」
「 ・・・・え? 」
受け取ったハンカチをポケットに
しまいながら私の手を掴み
コンビニ袋を囲んで座る男の子たちの方へと
歩き出した彼に、名前を教えた覚えはない。
一応足を止めて、”私はそっちに行かない”
と抵抗するものの、彼は笑いながら
私を引きずって行く。
「 あ~!大勇が女の子連れて来た! 」
「 いや、連れて来たのは玲央だろ 」
「 同意の上ではなさそうだけどな 」
私を連れて来た彼はフェンスに
寄りかかってぼんやりどこかを眺めていて、
そんな彼の前に座る3人にまじまじと
見られて、恥ずかしいやら怖いやらで
大勇くんの後ろにさっと隠れた。
「 北城柚菜、だっけ? 」
「 そうそう。あ、俺女子生徒の
顔と名前は全部頭に入ってるから
聞かなくても名前なんて分かるよ 」
すごいでしょ?と首を傾げながら
振り向いた彼に一体どういう頭の
作りになっているんだと内心
つっこみを入れながら、帰ろう・・
というか逃げようと体の向きを変えた。