Black Beast.
このまま眠ってしまいたい。
だけどここが家じゃなくて
拓未くんの居る病院だって
頭のどこかでちゃんと分かっていて、
寝ちゃいけないって、それだけ
自分に言い聞かせていた。
「 ──────────・・無視すんな 」
少し不機嫌そうな低い声が
すぐ近くで聞こえたと思ったら、
私の耳元に口を寄せていた彼に
カリッ、と耳朶を甘噛みされた。
「 ~~~ッッな・・・ 」
痛い、というより、熱い。
思わずバッと両手を離した私は
抱き上げられているということを
完全に忘れていた。
「 拓未んとこ行く前に顔洗えよ。
ひでぇ顔してる 」
「 うっ・・・ 」
落ちそうになった私をぎゅっと
抱きしめた玲央くんはその場に
私をゆっくり降ろして
ニッ、と意地悪そうに笑った。