Black Beast.
足元に視線を落とし、
何かを考えているのか
小さく溜息を零した玲央くんは
私に気付いたのか顔を上げて
バチッ、と目が合った。
「 行くぞ 」
たった一言、そう言った彼は
私のところまで来ると、
グイッ、と腰に手を回して
拓未くんの病室へ足を向けた。
気だるそうな表情は
いつもと変わらなくて、
さっきの溜息はなんだろうなんて
思ってみると、それもいつもと
変わらないことに気付いた。
そう言えば、玲央くんって
溜息多いな・・・。
横目でチラリ、と玲央くんを見ながら
そんなことを考えていたら
あっという間に拓未くんの病室に着いた。
─────────────ガラッ
「 わっ!!! 」
「 きゃあっ!! 」
夜にも関わらず、遠慮なく
ガラッと病室のドアを開けた玲央くんは
ビクともしないのに、目の前から
急に出てきた紫緒さんに驚いて
声を上げた私は玲央くんに抱きついてしまった。