Black Beast.
「 ・・・うるせぇ 」
呆れたような顔で紫緒さんを
睨みながらも、”お前もうるさい”と
頭を小突かれた。
「 大変だったんだろ~?
話は聞いたよ! 」
頑張ったな~、と玲央くんの肩を
バシバシ叩いた紫緒さんは
やたらとテンションが高くて、
そんな紫緒さんを押し退け病室に入ると
ベッドの上で上体を起こして
苦笑している拓未くんと目が合った。
「 あ・・・ 」
何か言いたげに口を開き、
だけど気まずそうに視線を足元へ
落とした拓未くんを見ていたら、
玲央くんがパッと私から手を離して
”行けば”って紫緒さんを蹴りながら
そう言った。
玲央くんをしばらく見ていたけど、
紫緒さんの相手で精一杯なのか
私は玲央くんの視界に入っていなくて、
”うん”とそれだけ返して拓未くんの方へ
足を向けた。
ベッドの脇に腰を下ろすと
拓未くんは視線を下げたまま口を開いた。
「 悪い、怖い思いさせて。
・・・・ケガは? 」
「 私は大丈夫だよ。
拓未くんこそケガの調子は・・・? 」
「 ん、ああ、全然平気 」
頭に巻かれた包帯に触れながら
そう言って小さく笑った拓未くんは
顔色もよくて、本当に平気そうに見えた。