Black Beast.
「 なに、その水着 」
「 え? 」
「 俺が水買いに行ってる間に
なにパーカー脱いでんだよ 」
体の向きを浜辺の方に向けて
ゆっくり泳ぎながら、彼は
ムスッとした顔でそう言った。
この近くにある旅館に3泊する私たちは
早速1度そこへ行って、部屋に入り、
水着に着替えてここまで来た。
その途中でダボダボの白いパーカーを
半ば無理矢理着せられて、
だけど暑いし折角の海だしということで
玲央くんたちが水を買いに行っている間に
パーカーを脱いで、先に海に入っていた。
・・・・それで何で怒ってるんだろう。
首を傾げる私を見て呆れたように
溜息を零した彼は泳ぎが得意なのか
浜辺がさっきより大分近くに見えた。
「 お前なぁ、・・・・ま、いいけど。
お前もその内分かるだろ 」
「 ・・・・? 」
すぐそこで大きめの浮き輪を
2人で使っていた女の子たちを
横目に、彼はそう言った。
よく意味が分からないけど
後で分かるなら、と
それ以上聞こうとはしなかった。