Black Beast.



「 柚菜 」


「 うん?・・・・ッ 」


「 暑すぎてもう無理。
  戻るからお前はパーカー着ろよ 」



浜辺に向かって泳ぐ彼の背中を
ぼんやり眺めていたら、
急に彼が振り向いて、チュッ、と
キスをされた。



周りには人が居るにも関わらず
不意打ちのキスに顔が熱くなってきて
浜辺につくまで顔を伏せていた。



それからまだまだ遊びたいすずくんを
引きずるように旅館へ戻った私たちは
シャワーを浴びに行くため途中で別れた。



「 シャワーなら、こちらですよ 」


「 すいません・・・ありがとうございます 」



途中迷った私をシャワー室まで
案内してくれた女将さんに頭を下げて
シャワー室に入ると、私以外
誰もいなくて貸切状態だった。



海から上がって砂のついた体を
シャワーで流すだけだし、
そんなに時間は掛からない。



夜にはゆっくり温泉に浸かって、
それから、それからと色々
考えながらも体は動いていて、
気付けばシャワーを終えて
廊下に出ていた。



「 こら、柚菜 」



どこに行けばいいのか分からなくて
とりあえず歩き出した私の腕を
待っていてくれたらしい玲央くんが
掴んで引き止めた。



< 239 / 336 >

この作品をシェア

pagetop