Black Beast.
「 柚菜 」
「 うん?・・・・ッ 」
「 暑すぎてもう無理。
戻るからお前はパーカー着ろよ 」
浜辺に向かって泳ぐ彼の背中を
ぼんやり眺めていたら、
急に彼が振り向いて、チュッ、と
キスをされた。
周りには人が居るにも関わらず
不意打ちのキスに顔が熱くなってきて
浜辺につくまで顔を伏せていた。
それからまだまだ遊びたいすずくんを
引きずるように旅館へ戻った私たちは
シャワーを浴びに行くため途中で別れた。
「 シャワーなら、こちらですよ 」
「 すいません・・・ありがとうございます 」
途中迷った私をシャワー室まで
案内してくれた女将さんに頭を下げて
シャワー室に入ると、私以外
誰もいなくて貸切状態だった。
海から上がって砂のついた体を
シャワーで流すだけだし、
そんなに時間は掛からない。
夜にはゆっくり温泉に浸かって、
それから、それからと色々
考えながらも体は動いていて、
気付けばシャワーを終えて
廊下に出ていた。
「 こら、柚菜 」
どこに行けばいいのか分からなくて
とりあえず歩き出した私の腕を
待っていてくれたらしい玲央くんが
掴んで引き止めた。