Black Beast.
「 ・・・可愛くなんかねぇ!!!! 」
鞄を拾い上げた私を見下ろし
声を張った彼は眉を寄せて
未だに笑っている大勇くんに向かって
”うるせぇ”と怒鳴ると、
驚いてその場に座り込んだ私の
腕を掴んだ。
「 ご、ごめんなさい・・・ 」
「 俺、山口涼香[ヤマグチ スズカ]。お前は? 」
「 北城柚菜です・・・ 」
何事もなかったかのように
話しかけて来た彼に驚いた。
”柚菜か!よろしくな!”と
私の腕を引っ張りながら笑って、
気付けば私は立っていた。
「 背はアレだけどさー
力は結構あるんだぜ? 」
そう言って満面の笑みを向けられて
また無意識に”可愛い”と口走って
しまいそうになったのを咄嗟に飲み込んだ。
「 すずー、朝飯まだだろ? 」
「 おう!今食う~ 」
子どもみたいなすず君は意外にも金髪。
身長に似合う童顔からは想像が
つかない髪の色だけど、なんでか
似合っていて、走っていくすず君の
背中を眺めながら1人首を傾げていた。