Black Beast.
・・・・・それは、1週間前のこと。
「 嫌だよ、暑いし 」
「 え~!でも3年は最後の夏休みだろ? 」
「 だからなに? 」
「 だから行くんじゃん! 」
”分かってねぇな~”と
口先を尖らせながらすずくんは
希くんの背中をバシバシ叩いていた。
気付けば夏休みが始まる1週間前で、
楽しそうに携帯をいじるすずくんは
どうやらみんなでどこか行きたいらしい。
いつも通り屋上に集まったものの、
あまりの暑さにみんなはぐったりとしていた。
涼しい顔をしながらも、”暑い”と
文句とともに溜息を吐き出す玲央くんの隣で
タオルを頭に乗っけた私はフェンスに
背中をくっつけて座っていた。
「 あ~・・・すず、暑苦しい 」
「 はぁ!? 」
「 っていうかうるさい。暑い 」
「 暑いのは夏だからだろ!? 」
冷房が壊れてしまった今年の夏は
生徒にとって地獄のようなものだった。
夏休み中に修理するから、と先生は
言っていたけど、休み中の補習は
どうなるんだとみんな思っていただろうけど、
暑さにやられて文句を言う気にもなれなかった。