Black Beast.
暑苦しいと言いながらも
追いかけるすずくんから
逃げ回る璃玖くんは楽しそうで
私たちに”日常”が戻ってきたことを
改めて実感した。
「 ・・・で!どこ行く!? 」
途中で璃玖くんがバタリと
倒れたところで追いかけっこは終わり、
目をキラキラとさせたすずくんが
玲央くんの目の前まで来てそう言った。
「 ・・・・ 」
「 なぁ、玲央ってば! 」
すずくんと一緒に玲央くんを見上げていると、
チラリと私を見下ろした玲央くんが
ガシャンッ、と音をたててフェンスに
寄りかかり、大きな溜息を吐いたあと
ゆっくり顔を上げた。
「 ・・・・行くなら来週 」
「 マジで!? 」
「 あぁ、行けるようにしとけ 」
それだけ言うと私の腕を掴み
半ば無理矢理立ち上がらせると
日が差してきた屋上を出て
教室へ戻った。
「 玲央くん 」
「 ・・・なに 」
「 どこ行くの? 」
「 ・・・さぁな。お前も用意しとけよ 」
この会話の後、そのことについて
触れることはなかった。