Black Beast.
自販機で水を買って部屋に戻ると、
掛けたはずの部屋の鍵が開いていた。
それだけで、心拍数がグン、と上がる。
「 ・・・・ 」
そっと静かに部屋に入って、
中に居るであろう彼の姿を探した。
・・・・あれ?
襖で仕切られた向こうには
布団が敷いてありそうで、
そんなものを見てしまったら
平常心なんて保てそうになかった私は
彼を探すのをやめて、
荷物の整理をすることにした。
とりあえず、明日の着替えだけ
出しておこうかな?
大きめの鞄を漁りながら
要りそうなものを出していく。
「 ────────風呂、どうだった? 」
急に耳元で話しかけられて、
振り返ろうとしたら後ろから
抱きしめられた。
返事をしたくても開いた口から
言葉は何も出てこなくて、
返事を催促するように
”柚菜?”と掠れた声で名前を呼ばれた。