Black Beast.
♯16.『 だいすき 』
「 ・・・・んん・・・ 」
ぼんやりとした意識のなか、
ゆっくり目を開けると
すぐ目の前に玲央くんの顔があった。
チュッ、とリップ音をたてて離れると
私の顔を覗きこみながら
ふっ、と小さく笑った。
「 起きた? 」
「 ・・・うん・・ 」
でも、まだ少し眠くて、ゴツゴツした
枕に顔を埋めながら返事をする。
ぼうっとしながら、鼻を掠める
畳の匂いに首を傾げて、
───────ああ、そういえば・・・。
みんなで旅行に来てたんだって思い出して
ガバッと体を起こした。
「 あ・・・・ 」
寝起きで働かない頭を必死に働かせて
今さっきのことをよく考えてみる。
「 夕飯、さっき呼びに来たんだけど
どうする? 」
部屋に響いたリップ音、
ゴツゴツした枕、畳の匂い。