Black Beast.



「 どうしたの? 」



イスに浅く座って大きな溜息を
零す璃玖くんの顔を覗きこむと
璃玖くんは困ったように眉を寄せていた。



「 ・・・いや、玲央と何かあった? 」


「 ・・・・ 」


「 あぁ、やっぱり・・・? 」


「 玲央くん、何かしたの・・? 」



苦笑する璃玖くんを見て
大広間に戻ろうとした私の腕を
掴んで璃玖くんが引き止めた。



「 いや、すずがジュース零しただけだよ。
  玲央はただ機嫌が悪いだけで・・・ 」


「 そ、そっか・・・ 」


「 喧嘩でもしたの? 」



璃玖くんの方に向き直った私の両手を
両手で掴んだ璃玖くんは
そう言って首を傾げた。



「 ・・・・そうじゃ、ないの 」


「 ・・・・うん、そっか。
  まぁ、機嫌が悪いのなんて
  慣れてるから大丈夫なんだけどさ、
  早く仲直りしないと折角の旅行が
  楽しくない思い出になっちゃうよ? 」


「 うん・・・ありがとう
  ・・・・ごめんね 」



よしっ、と言って立ち上がった
璃玖くんは”別にいいよ”と
ヘラッと笑うと、パッと私の手を話し
おしぼりを貰いに行ってしまった。



残された私はというと
大広間に戻るしかないわけで、
重い足取りで来た道を戻っていった。



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