Black Beast.
あれからすぐ後に戻ってきた
璃玖くんは、貰ってきたおしぼりで
ベタベタになっていたすずくんの手と
テーブルを拭いて、みんなに混じって
楽しそうに笑っていた。
「 あんまり食べてないね?
お腹、空いてない? 」
「 そんなことないよ? 」
しばらくして、騒がしい輪の中から
璃玖くんが抜けてきて、
私の隣に腰を下ろした。
両手を後ろについて、足を伸ばして
座った璃玖くんは首だけ私の方を向けて
口を開いた。
「 みんな、ここが柚菜ちゃんの
地元だって知ってるよ。
水着に着替えてるときに聞いたから 」
「 ・・・・ 」
「 詳しく知ってるのは玲央だけだけど、
ここで嫌なことがあってっていうのも
みんな分かってる 」
璃玖くんから目を逸らし、楽しそうな
みんなの方へ視線を移した。
・・・・知ってたんだ。と
口からついて出そうな言葉を飲み込んで、
そのまま視線を足元へ落とす。
「 柚菜ちゃんは、さ。
ここに来たくなかった? 」
「 え・・・? 」
「 嫌なこと思い出すから、
本当はここに来たくなかった? 」
顔を上げた私の目に、真剣な表情の
璃玖くんが映る。