Black Beast.
昨日のセットされた髪型と違って
少し長めの髪を片方だけ耳にかけ、
しょんぼりした表情の彼が
なんだか子犬のように見えてきた。
「 柚菜はここに居るよな・・? 」
「 ・・・・柚菜ちゃん? 」
隣で目をうるうるさせている
すず君が私の袖をきゅっと掴み、
軽く引き止められた。
少し離れたところで子犬のような
チャラ男こと大勇くんが
私の名前を呼んで来て、私は
・・・・・真剣に悩んでいた。
「 なんだよこの茶番・・ 」
「 柚菜ちゃん、ノリがいいね~ 」
右側に座っていたすず君とは反対の
左側に座っていた男の人が
私の袖を掴んでいたすず君の手を
ぱしっと弾いた。
「 ・・・・?・・あ、俺? 」
ここに居る人たちの中で唯一
眼鏡をかけている彼に名前を
教えて覚えはないけど、さっきから
何度かここで名前を呼ばれているし
知っていてもおかしくはない。
緩く巻いたような茶色い髪は
元からなのか彼に似合っていた。
「 楠木璃玖[クスノキ リク]。よろしく! 」