Black Beast.
♯17.黒獣の嫉妬



「 れ、玲央くん・・・ 」



真っ直ぐ部屋に戻って、
襖の前で足を止めた。
顔を見てしまうと話せなくなりそうで、
震える手をぎゅっと握りながら
中に居るであろう彼を呼ぶ。



「 玲央くん? 」



しばらく待っても返事がなくて、
寝ちゃったのかな、と襖を開けた。



玲央くんが枕にしていた座布団の上に
脱ぎ捨てたような浴衣が目に入った。
わざわざ着替えてるってことは
お風呂・・・じゃないんだよね?



私と一緒に居るのが嫌・・・とか?



悪い方向にばかり考えてしまって
振り払うように首を振った。
とりあえず、探さないと・・!



夜の10時を過ぎた夏の空は
当たり前のように真っ暗で、
正直外に出るのは気が引けたけど
この機会を逃がしたら何も
言えないんじゃないかって思うと
勝手に足が外に向いていた。



旅館の玄関まで行くと、
女将さんが下駄を出してくれて、
”ありがとうございます”と
頭を下げ、旅館を出た。



カラン、カラン、と下駄の音が
耳の奥に響いてくる。



どこに居るんだろう。



地元なだけあって、この周辺には詳しい。
だけど、この辺を知らない玲央くんが
行く場所なんて分からない・・・。



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