Black Beast.
旅館を出てすぐの大道路を
右、左と何度も何度も見て、
迷って、迷って。
「 ・・・・どこだろ・・・ 」
確実に1人になれるところ。
そんなところ、1つしか
思い浮かばなくて、
結局私は右にも左にも行かず、
真っ直ぐ目の前に進んだ。
向かう先は、海。
夏はこんな暗い中でも
浜で花火をする人が居て、
今日もしているらしく、
男の人たちの声に混じって
花火の音が聞こえてきた。
真っ暗な中、ぼんやり見える花火の光。
浜辺を歩きながら耳を掠める
海の音に足を止めた。
・・・・・懐かしい。
夏には何度も泳ぎに来た思い出がある。
真っ暗で何も見えないけど、
記憶の中にある海を思い出しながら
ゆっくり歩いていた。
「 キミ、どこの学校? 」
静かに歩いていても、下駄の音は
どうしても小さくはならなくて、
その音を追ってきたのか後ろから
声をかけられた。
・・・・補導?
まさか、と思いながら振り返って
背筋が凍りついた。