Black Beast.
「 っつーか、人の車
蹴ってんじゃねぇよ! 」
声を荒げながら、1人が
玲央くんに殴りかかっていく。
スラッとした長い足が
男の人の腹部を蹴り上げて、
そのまま胸倉を掴んだ玲央くんは
容赦なく顔を数回殴ると
完全に意識を飛ばしたその人を
元に居たところまで投げ飛ばした。
「 な、んなんだよ・・・ッ 」
私を抱き上げている人は
そう言って震えていた。
数分、たった数分で
6人も居た男の人の内
5人が意識を失って足元に
転がっていた。
玲央くんは無傷で、
息も乱さず、表情も変えずに
5人をボコボコにしてしまった。
冷たい目が映しているのは
私ではなく、私を抱き上げている
この男の人だ。
”睨んでる”というより、
”見透かしている”ような。
気ダルそうなその目は
飢えた獣のようにギラついていて、
寒気がした。
「 それ以上来てみろ!
この女、どうなるか分かんねぇぞ! 」
いつかのドラマで聞いたことのある
お決まりのセリフに、玲央くんは
ふっ、と口元を歪めた。