Black Beast.
差し出された大きな手を
しばらく見つめたあと、
握手なのかな、と首を
傾げながら手を差し出すと
がしっと掴まれた。
「 これ、あげる 」
「 ありがとう、ございます・・・ 」
黒縁眼鏡の奥の瞳がどこか
怪しい気がしたけど、
寝不足で朝は食欲がなかった私は
起きてから何も口に入れていなかった。
いちごのチョコ?
ピンク色の包装を開けて
一口サイズのチョコレートを
口の中に放り込むと、周りの
空気が一気に冷たくなった気がした。
「 ・・・・む? 」
くすくすと隣で笑っている
璃玖くん以外は立ち上がって
みんな知らない顔をして
私たちから離れていった。
「 ・・・え?な、に・・・っ 」
「 それ、俺の 」
今さっきまで後ろのフェンスに
背中を預けてぼんやりしていたはずの彼が
いつの間にか私のすぐ後ろに立っていて、
”それ”と言うのは多分、私の口の中の
チョコレートのことで・・・。
つまり、私はこの人のチョコレートを
勝手に食べてしまった・・・と・・?