Black Beast.
・・・・・・あれから、玲央くんは
私を抱き上げたまま旅館に戻り、
周りの目なんて気にもせず
真っ直ぐ部屋に戻ってきた。
怒っているのか、
怒っていないのか。
それすら分からないままで。
部屋に入ってすぐ
畳の上に私を降ろした彼は
ガチャン、とドアに鍵を掛けていた。
そんな音にさえビクッと
肩を上げる私の目の前に
玲央くんは膝をついて、
怒られる、と身を竦めた私を
ぎゅうっと、強く抱きしめた。
「 ・・・なに、他の奴に触られてんだよ 」
耳元で低い声が響く。
息苦しいくらい強い力で
抱きしめられながら、
”ごめんなさい”とか細い声で謝った。