Black Beast.
「 璃玖、買って来い 」
「 え~! 」
「 嫌なのか? 」
「 や、分かった!行ってくる! 」
そんなやり取りの後、璃玖くんが
バタバタと屋上から出て行って、
さっきまでここに居たはずの
みんなは遠くで集まって楽しそうに
何かを話していた。
・・・・この状況、どうしよう。
未だに後ろに居る彼はしゃがんで
私の肩に手を置いていて、
逃げようにも逃げられなかった。
「 龍崎玲央[リュウザキ レオ] 」
「 え・・・・? 」
「 俺の名前。覚えとけよ?
それから、そのチョコは
”俺の”だから 」
さっきも聞きましたよ、と
顔を上げると肩に置かれていた
彼の手が私の頬に添えられた。
「 あ、の・・・っ!? 」
何でこのとき声を出してしまったのか、
”口を開けてしまったのか”。
無理矢理塞がれた口の中には
溶けかけていたチョコレートの
甘い香りが充満していた。