Black Beast.
ドアの向こうから聞こえる
騒ぎ声は多分、大勇くんで。
「 ・・・・はぁ・・・ 」
触れる寸前で止まっていた
玲央くんは溜息を零し、
チュッ、と触れるだけのキスを落とすと
「 行くぞ 」
と、私の手を引き部屋を出た。
朝からどこか疲れたような
玲央くんの背中をぼんやり眺めながら、
昨日と同じ大広間へ向かう途中、
女の子たちの甲高い笑い声が聞こえてきて
そっと視線を向けた。
”あの人、すごいカッコいい”
私のすぐ前を歩く彼を指差して
楽しそうに話す声が嫌ってくらい
聞こえてきて、どこか見覚えのある
その顔をジッと見ていた。
”海に居た人じゃない!?”
・・・・あ、そう言えば。と
その声に内心スッキリしつつも、
どこかモヤモヤしていて。
「 柚菜? 」
歩くスピードが遅くなった私を
不思議そうに見下ろす彼に
なんでもないよ、と笑って返した。