Black Beast.
タチの悪そうなその人は
ゾロゾロと仲間を連れていて、
みんながすずくんを見下ろしていた。
『 おーい、すずー? 』
こんな雰囲気の中でも
陽気な大勇くんの声に
手を踏みつけていた人が口元を歪めて、
すずくんの手を蹴飛ばすと
携帯を拾い上げた。
「 おい! 」
まるで自分のもののように
その人は携帯を耳にあてると、
楽しそうに目を細めた。
『 すず? 』
「 残念、すずくんじゃないでーす 」
『 ・・・・ありゃ 』
スピーカーモードに切り替えた彼は
音量を上げ、周りの人たちにも
聞こえるように携帯を持ち替えた。
『 すず、そこに居る? 』
冷静、というか、寧ろ楽しそうな
大勇くんの声にケラケラと
笑い出す人たちを、すずくんが
キッと睨み上げた。
「 いるよ 」
『 あぁ、じゃ、柚菜ちゃんも居るね 』
この状況を、分かっているんだろうか。
この人は・・・と内心呆れつつも
子ども向けの絶叫系を乗り回したおかげで
自分の足が使い物にならないことに気付き、
自分自身にも呆れた。