Black Beast.



「 あれ?違うんですか? 」


「 あっ!ちょっと! 」



バッと2人から顔を逸らして
私は何も言わず、そのまま
逃げ出してしまった。



身長が高くて、細くて、綺麗で。



顔を隠すように両手で荷物を持って、
足早に部屋に戻ると、
室内は涼しくて、ちょうどよかった。



走ったせいで鼓動は速くて、
息も切れていて。



ドアのすぐ目の前で倒れこむように
荷物を抱いたまましばらく
泣いていた私は、廊下を歩く
人の足音にビクッと肩を上げて、
玲央くんの居る奥の部屋へ入った。



7時前をさす時計を横目に
ドサッと両手に持っていた荷物を
足元に落として、そっとまだ
眠っている玲央くんに近づく。









「 ─────────玲央くん・・・ッ 」




起きませんように。と願いながら
ぎゅうっと抱きついた。




小さく掠れた声で名前を呼びながら
泣き声をぐっと堪えようとしたけど
どうしても声が漏れてしまって、
起きないで、と思いながらも
起きて、と思う自分が居て、
頭の中がぐちゃぐちゃになる。




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