Black Beast.
「 ?・・・何かあった? 」
目の前まで来たらしいすずくんが
今さっき大勇くんに解放されたばかりの
私の手を両手でぎゅっと握って、
そっと顔を覗きこんできた。
「 熱ある?顔赤いし・・手も・・・!
玲央ー!!! 」
保健室行った方がいいんじゃないの!?と
男の子にしては少し高い声が屋上に
響き渡った。
昨日と同じ場所でフェンスに寄りかかって
コンビニ袋の中へ視線を落としていた彼は
ゆっくり顔を上げて、私を見た。
「 ・・・大丈夫だろ 」
「 そうそう。今日は大事な日だから
気合入ってるんだよ 」
私と目を合わせたまま、ポケットに
手を入れた彼が何を言いたいのか
なんとなく想像できて、きっと今
彼の左手も温かいんだろうな、と
そう思うと恥ずかしすぎて目を逸らしてしまった。
「 あーっ!あの作戦のこと? 」
「 そう言えば髪型変わってるな 」
私を気遣いながらゆっくりみんなの方へ
連れて行ってくれるすずくんは少し
長かった前髪を結んでいて、歩くたびに
頭の上で揺れている。
・・・ちょんまげ、可愛い・・・!