Black Beast.
「 ・・・・よ 」
「 え?なに? 」
基本的に感情をあまり表に出さない
私が珍しく震えていた理由を
普段あまり話さない口で伝えると
どうやら声が小さくて聞こえなかったらしい。
「 怖かったの? 」
私を助けてくれたことに
お礼くらいは言ってもいいだろうけど、
この人はどうも私と合わない気がする。
久々にどこかでブチッと何かが
切れる音がした。
「 高所恐怖症!なんですよ! 」
どうですか、聞こえましたか。と
目の前にしゃがんで私の顔を
覗き込んでいた彼に向かって
大声でそう言えば、頬を冷やしていた
ハンカチが膝の上に落ちてきた。
如何にも驚いたという表情で
私を見て固まっている彼を払いのけて
膝の上に落ちたハンカチを拾いあげ、
今度は自分で頬を冷やすことにした。
「 ・・・・・ぷっ 」
暫くして我に返ったらしい彼は
私の目の前に座り込むと
お腹を抱えて笑い出した。
耳を塞ぎたくなるほど大きな笑い声に
苛々は増すばかりだった。