Black Beast.
「 怖いのか 」
「 ・・・・ 」
彼の問いに答える余裕すらなくて、
行きたくないと彼の制服の裾を
強く握った。
「 ───────────・・柚菜 」
目的のビルの手前、人通りの多い
表通りから1本入った薄暗い路地に
響いた私を呼ぶ声。
腰に回されていた手が離されて、
私は自由になった。
逃げるなら、今だ。
「 ・・・・・っ 」
逃げられるのに、逃げられない。
どうしても足が動かない。
目を伏せた彼が私を見たら、
きっと私は捕まってしまう。
”逃げるなら今しかない。”
あのビルに行けばきっと私は
何かに巻き込まれる。
分かっているのに、逃げなきゃ、と
そう思うのに・・・・。