Black Beast.
すぐ目の前でレースゲームを
していた集団は一斉にすずくんと
璃玖くんの方へ顔を向けていて、
楽しそうな雰囲気が一気に
冷えた空気に変わって行った。
「 ・・・・ 」
私の手を引いて璃玖くんたちから
1番離れたところにある
クレーンゲーム機の前に来た彼は
ポケットから小銭を出して
いくらあるか数えていた。
「 欲しいのあるか? 」
「 ・・・・え? 」
「 取ってやる 」
色違いのクマのぬいぐるみが
たくさんある中で、黒色の
クマのぬいぐるみが目に入った。
明るい色の中で1つだけある
黒色は目立っていて、
なんとなく、可哀想で、
気付いたら”あれ”と
黒色のクマを指差していた。
「 ・・・ふーん 」
白色の隣にあるから
目立つだけかもしれないけど、
やっぱり可哀想に思える。
お金を入れて無表情でゲームを
し出す彼を横目に、私は
璃玖くんたちの方へ視線を移した。