Black Beast.
笑い声はもう聞こえないけど、
怒鳴り声も聞こえない。
喧嘩はしていないようだけど
店内は静まり返っていて
異様な雰囲気だった。
「 なにー?2人で普通にデート
楽しんでるの?ずるいなぁ・・・ 」
「 桜井くん! 」
「 さっき振りだね~!なに見てるの? 」
いつの間に来たのか、大勇くんが
楽しそうに玲央くんに声をかけた後、
私の隣まで来て、璃玖くんたちを見つけた。
「 あ~、すずが・・・ 」
「 大勇、行くなよ? 」
苦笑する大勇くんの襟を掴んで
後ろから拓未くんが止めた。
さっき別れたときは確かまだ
拓未くんはいつも通りパーカーの
帽子を被っていた。
「 あ、そういえば、勝手に
ブレザー返してもらったって
言うの忘れてた 」
「 え?・・・あ、・・・ああ!!!
ごめんなさい・・・ 」
パーカーのことで頭がいっぱいに
なっていた私は、彼に制服を
借りたことを思い出してパッと頭を下げた。