Black Beast.
「 助けてくださって
ありがとうございました 」
助けてもらえてなかったら
きっと頬は赤くなるくらいじゃ
済んでなかっただろう。
それにこのシンプルなモノクロの
ハンカチもきっと彼のものだろうし、
そういうことについてはやっぱり
お礼を言わないと失礼だ。
「 べ、別にっ・・・いいけど・・っ 」
目に涙を浮かべた彼は
未だに笑いが止まらないらしく、
”笑いすぎて辛い”なんて言いながら
咳までし出した。
聞こえない程度に小さく溜息を零して
保健室から出ようと立ち上がると、
保健室のドアが大きな音をたてて開いた。
さっき私たちが入って来たときは
こんな音はしなかったはず・・・というか、
ドアってこんな音も出せるのかってくらいの音にどんなゴツい生徒なんだろうと自然と
視線はドアの方へ移っていく。
「 大勇、お前うるせぇ 」
「 あれ、拓未だけ?
あの子連れて来ると思ってたのに 」
とても強い力を持っているようには
見えない細い体に驚いた。
聞き覚えのあるその声に、彼がさっき
教室に入って来たもう1人の人だと分かって
お礼を言わないと・・・と思ったものの
あまりの威圧感に動けないで居た。