Black Beast.



口の中に広がるイチゴ味は
とにかく甘い。



甘いものは好きだけど
今はそういう気分じゃ
なかったかもしれない・・・。



「 あ、そうだ。
  俺、桜井大勇[サクライ ヒロム]ね!
  帰る前に連絡先教えてよ 」



教室に鞄を取りに戻ろうと
保健室から出ようとしていた私の
腕を掴んだ彼、大勇くんは携帯を片手に
”早く!”と急かしてきた。



「 ん、お前の 」


「 ・・・・ど、どうも 」



携帯、鞄の中だからって
断ろうと顔を上げた途端、私と
大勇くんの間に鞄を割り込ませた彼が
大勇くんの手を払いのけて
私の手に鞄を持たせた。



「 ってぇ・・・まぁ、いいや。
  明日聞きに行くから、
  待っててね? 」



ドアを開けながら振り返って
ウインクして来た彼から
ふいっと目を逸らした後
すぐに視線を大勇くんへと戻した。



今、開いたドアの向こうに
・・・・何か、居たような・・・



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