Black Beast.



当たり前のように私がカゴに入れた
小物の分のお金も出してくれて、
袋も分けてくれて。



大きめの2つの袋を片手に持って
空いた手で私の手を引く彼が
まるで旦那さんのようで。



「 ・・・顔、赤いな 」



お店を出る前に立ち止まって
振り返った彼がそう言って笑った。






ドキン。



いや、”キュン”。
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、
跳ね上がって、高鳴って。



切なくて、嬉しくて、恥ずかしい。



いつだって、無表情かムスッとした表情で、
なかなか笑ってくれることなんてないから。



「 ・・・反則すぎるよ 」


「 なに? 」



その笑顔は、ズルい。



私が俯くと、繋いでいた手を離されて
大きな手が今度は私の腰に回された。
行き場を失くした私の手は、自然と
彼の手を上からきゅっと握っていた。



< 96 / 336 >

この作品をシェア

pagetop