Black Beast.
当たり前のように私がカゴに入れた
小物の分のお金も出してくれて、
袋も分けてくれて。
大きめの2つの袋を片手に持って
空いた手で私の手を引く彼が
まるで旦那さんのようで。
「 ・・・顔、赤いな 」
お店を出る前に立ち止まって
振り返った彼がそう言って笑った。
ドキン。
いや、”キュン”。
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、
跳ね上がって、高鳴って。
切なくて、嬉しくて、恥ずかしい。
いつだって、無表情かムスッとした表情で、
なかなか笑ってくれることなんてないから。
「 ・・・反則すぎるよ 」
「 なに? 」
その笑顔は、ズルい。
私が俯くと、繋いでいた手を離されて
大きな手が今度は私の腰に回された。
行き場を失くした私の手は、自然と
彼の手を上からきゅっと握っていた。