オレ様専務を24時間 護衛する


「業者以外には指一本触れさせなかったバイクを貸したり、『気に食わない』の一言で食事を床に投げ捨てた人が文句も言わず完食して、挙句の果てにはおかわりしてるんでしょ?」

「いや……それは………」


確かに奴の料理の腕は買う。

男にしてはマメすぎるし、器用すぎる。

だから、始めの頃は不思議でならなかった。

だが、世の中、そんな奴が1人くらいいてもおかしくない気がして。



みかに言われて考えてみると、確かにそういう一面もある。

酒に付き合せる代わりに、奴の分も作ってやったり。

今までの家政婦達は、愛想だけで手際が悪かった。

奴は俺の行動の先の先まで予測してやがる。

だから、文句を言わなくてはいけない状況にならない。


………だからなのか?



「元々、京夜は優しい性格だから、それを隠すように完璧な仮面を被ったに過ぎない」

「ッ?!」

「そんな京夜と毎日一緒にいて、彼女は気付いたんじゃないかしら?」

「気付いたって、何を?」

「京夜が仮面を被る理由を」

「………」

「だから、彼女は彼女なりに、1人の人間として接してたと思う。――――無意識のうちにね」


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